賃金未払い残業について

退職した社員から突然、「働いていた間の残業代が未払いなので、支払ってほしい。」という請求がきたという話をよく聞きます。現在働いている従業員から残業手当が支給されていないと請求されることもありますが、辞めた後に請求してくるというところがみそです。

 

また、労総基準監督署の立入調査(臨検といいます)でも、「賃金未払い残業」が重点的な指導項目とされています。サービス残業と労働基準監督署に判断されると、全従業員を対象に最大2年間遡って残業代を支払うよう勧告され、その額が何百万、何千万という甚大な額になる場合もあります。

 

ちりも積もれば山となります。例えば、従業員が10名の会社で、一人1日1時間のサービス残業があったとすると、どれくらいの金額になるでしょうか?

 

従業員の給料が25万円、1日の勤務時間が8時間、年間勤務日数が260日とすると、

 

  8時間×260日÷12=173時間・・・・一月当たりの勤務時間

25万円÷173時間×1.25(残業割増)=1,800円・・・残業単価

1,800円×1時間×10人×260日=468万円

 

サービス残業2年分ということになると468万円×2=936万円にもなります。

 

これに加え、裁判になり、裁判所から未払い残業代と同額の「付加金」(制裁金のようなものです)の支払いを命じられると、支払い金額は936万円の2倍になり、1,872万円の支払いと退職日の翌日から年14.6%の遅延損害金まで支払わなければならなくなります。

 

金額的にも莫大なうえ、未払い残業を訴えてきたもと従業員との交渉や裁判になったときに要する時間、労働基準監督署から是正勧告を受けた場合の事後の対応など、金銭面以外にもかなりの労力がかかります。

 

こういう事態に陥らないよう、従業員の勤務時間をきちっと管理し、未払い残業代がない状態にしておくことが大切です。