定額残業制は残業代削減に有効か?

人件費をいかに抑制して経費を削減し、会社の収益を増加させるかは重要な問題ですが、人件費削減の第一歩は、残業手当の削減です。

残業時間を削減するには、まず「ダラダラ残業」をなくし残業手当を減らすことが第一歩です。

また、サービス業などで毎年夏場の観光シーズンは忙しくて残業時間が多いが、冬場は比較的仕事が忙しくないなど、季節的に忙しい時期が決まっている場合などは、変形労働時間制という特殊な労働時間制度を導入することも有効です。

では、毎月固定の定額残業代を設定して支給する「定額残業代」はどうでしょうか?  

結論からいうと新たに定額残業代として、職務手当などの名目で残業代を支給することは、残業代の削減にはつながりません。

何故なら、残業代を毎月定額で払うようにすれば、従業員がどれだけ残業してもそれ以上は払わなくていいというものではないからです。実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。会社からみれば、残業が少ない月は定額なので働いていない分も残業代を余計に払い、さらに残業が定額相当部分を越えたら超えたで差額を支払うことになり、残業代の削減という観点からいえば、むしろ損な制度です。

では何故、定額残業制度を導入している企業があるのでしょうか?

それは、労働基準監督署の指導で残業代を支払わなければならなくなったが、残業代の財源が確保できない時、現在支給している給与の中から残業代を捻出するのに有効な手段だからです。

例えば、毎月支払っている職務手当や営業手当を定額残業代に振り替えると新たな財源は必要ありません。

ただし、定額
残業代が合法と認められるためには以下の要件を満たさなければなりません。

残業代に相当する部分が、他の賃金と明確に区分されている
・何時間分の
残業代に相当するのか定められている
・実際の残業時間で計算された
残業代が定額残業代を超えた場合には、その差額が支払われている   

くどいようですが、残業代を毎月定額で払うようにすれば、従業員がどれだけ残業してもそれ以上は払わなくていいというものではありませんので、注意が必要です。実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。