従業員に損害賠償を請求できるか?

従業員が業務中に会社に損害を与えることがあります。例えば、会社の車を運転中に車を擦って傷をつけてしまった。操作を誤って、会社の機械を壊してしまった。飲食業などでは、食器を洗っているときに、滑らせて割ってしまったなどなど色々考えられます。

労働基準法では、「損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と賠償予定を禁止しています。従って、損害賠償額を明示することはできませんが、損害賠償を請求することを禁止しているわけではありません。あらかじめ、こうした損害を会社に与えた場合は、〇〇円損害を賠償することというふうに、賠償額をきめておくことを禁止しているだけです。

会社の車に傷をつけてしまったら修理代の全額を、食器を割ってしまったら買い替え代金の全額を請求することは可能ということになります。請求することは自由ですが、利益は会社、壊したら従業員が弁償しなさいでは公平性に欠けるといわざるをえません。これでは、従業員の士気が下がり、会社の業績がアップしていくとはとても思えません。

会社が損害賠償を請求できることを就業規則に入れること自体はおかしくありませんが、請求できるのは、「故意のとき」あるいは「重大な過失のとき」に限定すべきです。

むしろ、故意に会社に損害を与えたときには、懲戒処分と同時に損害賠償を請求すべきです。では「重大な過失のとき」とはどのようなときかというと、予見可能なのに、それを無視して損害を発生させたときです。たとえば、自動車運転前に酒を飲んで事故を起こした、火気持ち込み禁止を知りながら喫煙して火事を起こしたときが、「重大な過失のとき」にあたります。

会社側としては、こうした損害賠償や従業員の不祥事が起きた場合、本人と併せて損害賠償責任を負ってくれる人を確保しておく必要があります。いわゆる「身元保証人」です。

職員の採用する際、特に金銭を取り扱う部署に就く従業員には、身元保証人を用意してもらうことをお勧めします。

 

なお、身元保証の期間は、期間の定めのない場合は3年、期間を定めた場合でも5年を超えることはできません。保証期間を更新することはできますが、自動更新の約定は無効

となり、再度更新しなければ最長5年で効力がなくなりますのでご注意ください。